「美味しんぼ」親子和解は作者の苦肉の策だった!?

「ビッグコミックスピリッツ」の誌面に、激震が訪れた。

というのも、同誌の誇る人気作品「美味しんぼ」で、永遠のライバル関係と思われていた主人公・山岡士郎と、確執関係にあった父親の海原雄山が突然和解したのだ。

これには、往年のファンもびっくりだったのだが、これによってこの作品は、ある意味でフィナーレを迎えたと言っても過言ではない。

もちろん最終回というわけではないのだが、どうしてこの永遠の関係性をここにきて修復させたのか?

その裏には、原作者である雁屋哲(かりやてつ=66)氏の知られざる苦悩があったという。

雁屋氏さんは、自身のブログで「何も案が浮かばない」「初期に比べだいぶ質が低下している」とつづり、編集部には以前から「一区切り」付けたいと申し出ていた。

しかし、「美味しんぼ」ほどの大看板を編集部も簡単に終了させたり手放したりしたくないのが本音(実際に、漫画の業界ではよくある話)。

だが、時代が変われば読者の質も変わってくる。

連載がスタートした25年前に比べると、テレビやネットでのグルメ情報、食品業界情報の量が圧倒的に増え、かつては読者が興味を示した知識などは今では常識になっているのが現実だ。

自分よりはるかに沢山の知識を持った若い人が増え、知識のジレンマに陥っていたのだとか。

「以前は机に向かうと、独りでに案など出て来た物だが、いまは体中逆さにして振っても何も出て来ない。脳みそが空っぽになったというのか、硬直してしまったというのか、何も案が浮かばない」

また、「美味しんぼ」を連載する中で「倫理観念のない業者、会社が多すぎる」と同氏は食品業界批判をしてきたが、食品業界は「美味しんぼ」での批判を受け入れず、誤魔化すばかりか、雁屋さんを攻撃してきたという。

「もっと厳しく追及したかったのだが、力不足で及ばなかったのが残念だ。一漫画原作者の力は所詮カマキリの斧程度の物でしかなく、相手は本物の巨大な斧を振りかざしてやって来るのだから、勝負にならない」と、雁屋氏も悔しさをにじませている。

ただし、作品が完全に終わってしまうわけではない。

「日本全県味巡り」の企画は続け、「食の安全」など意味のある主題に出会えば単行本を作るのだという。

偽装などの問題が頻発している食品業界だけに、この作品に代表されるような追及の手を緩めてしまうと、また何が起きるかわかったものではないので残念なのだが。(古田鉄寿)


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